ねむみめも

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It's ineffable.

タイBLドラマの衝撃

遅ればせながら今月頭、初めてタイのBLドラマを観ました。

中国BL小説・ブロマンスドラマと同じく日本で波が立ち始めた時はふーんと横目に眺めていたのですが、U-NEXTの無料期間が終わる前にせっかくだから何か観ておこうと再生してみたら、すごい世界が開けていた…。

U-NEXTに続いてTERASAも無料トライアルに申し込んでせっせとタイドラマを視聴し、さらに楽天TVでレンタルするところまで来てしまいました。おそろしい。


タイBLドラマ初心者のマイベスト3

まだほんの少ししか観ていませんが、今のところマイベストの作品はこちら。

1. 2gether

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(引用元: @GMMTV

・眩しい。美しい。爽やか。かわいい。目の表現力が最高。まばたきするたびに宝石が零れ落ちる。
・学内一のイケメンという設定に説得力しかない美しさでギターも歌もうまい攻め(183cm)×俺女の子にめっちゃモテるぜと思っているちょいおバカだけど素直かわいい受け(185cm)
・性的描写ほぼなし(と言っていいはず)。
・TERASA会員無料。U-NEXTは会員でも追加課金制だが第1話は非会員も無料。

私はBLというジャンルにおいて、ふたりが想いを通わせるに至る心理描写、それを裏付ける仕事や日常の描写が魅力的な作品が特に好きです。学生ものだし性的描写も少ないながら2getherが爆発的人気を誇るのは、主役ふたりの恋愛感情だけの世界じゃなくて、彼らを取り巻く人々や学生生活の様子、そして作品のインスピレーションでありテーマでもある音楽が、作品世界を豊かに彩っているからだと思う。

まあ、なによりも主役ふたりのビジュアルが信じられないくらいに美しくて表現もチャーミングで瞬きする暇がないっていうのが最大の理由でしょうけど…でもやっぱり、それだけじゃ広がっていかないと思うのだ。

2gether Special Album

2gether Special Album

  • ブライト&ウィン
  • ポップ
  • ¥1833

サントラもスーパーかわいくて、これ流すだけで空気がキラキラします。もちろん作品のインスピレーションたるタイのバンドScrubbの曲もプレイリストにしてたくさん聴いてる!

キャストが集結して歌ったり弾いたりする「Play 2gether」なるバラエティ番組もあってキャスト沼にホイホイされる。あとどの作品もYouTubeに公式のメイキングとリアクション動画がある。あまりにも手厚い。


2. Lovely Writer The Series

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(引用元: U-NEXT

・回を重ねるごとに受けの可愛さと透明感が爆発する。4話がやばい。サブのヘテロカプもジェンダーの枠に悩み乗り越えていく様子が描かれていてすごく好き。家族へのカミングアウト問題や俳優のプライバシー、ファンの在り方なども描かれるので見応えがある。突っ込みどころはあるもののドラマ制作現場の雰囲気を見られるのでお仕事ものとしても楽しい。受けの担当編集は酷すぎて滅してほしいけど彼女がいたからこの出会いがあったんだよな…。
・年下わんこイケメン俳優執着スパダリ攻め(183cm)×年上ツンツンツンデレBLドラマ原作小説家受け(180cm)
・要所要所に色気がだだ漏れるし朝チュンはあるが、肌色は少ない。
・U-NEXT会員無料。第1話は非会員も無料。


3. Don't Say No

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(cr @MeMindY

・日本のBLで飽きるほど読んだエッセンスが立体化しまくっていて慄く。「ターン×タイプ2」サブカプのスピンオフ作品で、「ターン×タイプ」シリーズも同じく「知ってる」やつの立体化ですごいです。そしてDSNのサブカプも超絶良いです。私はサブカプの方が好き。
・愛が重すぎて手を出せない拗らせスパダリバスケ部キャプテン富豪息子攻め(188cm)×攻めが好きだが過去のトラウマにより自己肯定感激低で男遊びしまくり拗らせバスケ部副キャプテン受け(177cm)
・ふたりとも色気がすごいしお互いに愛を拗らせすぎててすごいのでNC(No Children)シーンもすごい。キャストのオフショサービスもすごい。
楽天TVでレンタル可能。第1話は無料。


日本のBL小説レーベルで言うなら、2getherはコバルト(専門レーベルじゃないけども)、Lovely Writerはシャレード、Don't Say NoはShyとかリブレの新書判…みたいな違いがある。挙げたレーベル名はあくまで個人の主観でしかありませんが、とにかくそのぐらいテイストに振り幅があって作品数もわんさかあるから、BL好きな人なら好きな作品がひとつはあるんじゃないかと思う。

テイストに幅はあれど、感情の機微に丁寧に向き合っているのが伝わってくる作品ばかりです。

新作もどんどん発表されるので供給が潤沢すぎて溺れそう。今年は私の大好きなDon't Say Noサブカプを主役にした新シリーズ「Just Say Yes」が予定されていて、観たらマイベストが更新されるであろうことを確信しています。

 

初心者が観測したタイBLドラマ文化およびタイ文化

・タイは人種の坩堝

たぶん社会の授業でこう習ったのであろうけれどもさっぱり忘れ、タイのイメージといえばガパオライスにバインミーグリーンカレーほか辛い食べ物、仏教、ランタン、LGBTQ先進国、あとなんか暑そう…くらいだった。
ところが、ドラマを観てみるとキャストの顔立ちがすごくバラエティ豊かで驚いた。日本と中国、それぞれ結構違うけどまあだいたいモンゴロイドベースではある。英米コーカソイドベース。でもタイは全部がマーブルに混ざってる。調べたら、多民族が折り重なるようにして融合してきた歴史があるんですね。面白いなぁ。中国ドラマでも今まで知らなかった美に触れて蒙を啓かれる思いがしたのですが、タイの作品もまた、自由をくれる感じがする。

・BLの主役たちはだいたいお金持ちのご子息

特に攻めの方々、なにせ大学生でBMWやポルシェを乗り回していたりするのである。実家に帰るシーンも謎の高そうな置物が並んでたり、天井がめちゃくちゃ高かったりするし、親が会社を経営していたりもする。今のところメインカプで庶民の描写を見たことがない。タイの庶民は日本の庶民よりも豪華なお部屋に住んでるってことかもしれないけど。

・攻めが「世話する」ものらしい

絶対に出てくるフレーズ「恋人の世話をする」。ふしぎ。BLなら攻め、あるいは男女カップルなら男が率先して世話するもの、っぽい(ドラマから推測しているだけですが)。養うとはまた違って、本当に身の回りのことをやってあげる意味のようなのですごい。英語だとcareだから「気にかける」でも良い気はするけど、日本の「気にかける」の域ではないのも確かだから翻訳者は「世話する」を選んだんだろうなぁ…。日本の旧来の価値観だと、男女なら女が世話する側って感覚ですよね。
そんなわけなのでタイBLはスパダリだらけである。時に空回ったり遠慮しすぎたりもするけれど、真摯に相手を思いやり、相手の喜ぶことをしたいと願い行動に移す姿を見るとこちらまで心が温かくなるし、ああどうか幸せになってくれと願わずにはいられない。もちろん、相手を想っての行動なので、受けも世話をする場面はある。「恋人は世話するもの(=思いやることがいちばん大事)」という基本姿勢も、タイBLが心に響く理由のひとつかもしれない。

・首を横に振りがち

あーあ、やれやれ、みたいな時に絶対首を横に振る。眉を上げながら、苦笑しながら、首を振る。他の国でもあるボディランゲージだけど、他の国の作品ではこんなにたくさん首振ってないと思うんだ。首振りを見すぎて私も近頃は夫との会話でつい首を振ってしまう。

・ピンマイクが服のがさがさ音をよく拾う

これも他の国の作品では聞き覚えがない。なぜなのだろう…? というか、他の国のメイキングでピンマイクつけてるの見たことない気がする。ガンマイクの種類がなにか違うのか?
ともあれ、ピンマイクがどこかについているのでふたりが接近すると服に当たってがさがさ言うし、わりとリップノイズも入ります。最初は戸惑ったけど慣れた。でもやっぱり不思議。

・同性愛の社会的障害はゼロじゃない、けれど

なんかね、タイはLGBTQ先進国というイメージが強くて、てっきり完全に障害ゼロなのかと思っていたわけです。でもドラマの描写においては、特に上の年代の人たちの中にはまだまだ偏見がある、あるいは自分の子供だと抵抗があるという人もいる様子。
そうは言っても、同世代のキャラクターは基本的に偏見なし。偏見を口にしたら「そんなこと言ってるおまえやばいよ」と言われるし、「男が好きなの?」という話題が出るとしても議論の中身が数歩先をいってる感じで清々しい。男性キャラは全員カップルになるBLファンタジー的な価値観というわけではなく、現実の価値観と地続きの清々しさ。そこがすごく良いのです。
実際はどうなんだろう…。

・日本要素がちらちら出てくる

日本っぽいごはん屋さんがよく出てくる(そしてネーミングがなかなかいかしてる)し、屋台トラックのメニューに日本のラーメンがあったりするし、お金持ちなママが浴衣着てお抹茶点ててたりもする。緑茶はヘルシーの象徴。そしてキャストのインスタを見てるとちょいちょいお寿司食べてて親近感が湧くし、過去にプライベートで来日していた様子も見られたりなんかして近所に出没していたのを知るとそわそわする。同じ空気吸ってたんだなって。

ダイレクトマーケティングが楽しい

作中でスポンサー商品の露骨な宣伝台詞が挟まるんだけど、それがもはやクセになる。かなりストーリーに深く組み込まれる商品もあって、うまいなぁと思います。タイに行ったらまずOishi(これも日本語ネーミングな飲み物)はダース買いするでしょうね。

カップルを演じたキャストは作品外でもカップル感を演出することが多い

私はモヤモヤする部分もあるんですが、大きな魅力でもある。作品を楽しんで、楽しみ尽くして、でももっと楽しみたい!というファンのニーズに応えてくれるすごい仕組み。個人のインスタで、ふたりのものすごーーく仲良さげな様子を見られる。マネージャーがカップル感ある激写フォトを出してきたりする。そりゃ盛り上がるわ…。
個人的に、中国ブロマンスドラマだとプロモーションとしてメイキングでふたりの仲が良い様子を見せまくるなど製作側がファンを煽るものの、それに関していざ問題が起きてもキャストを守るわけではなさそうなのが嫌だなと思っているんですよ。仲の良い様子を見られるのは嬉しいけどキャストを大事にしてほしい(彼らの真の関係性がどうなのかというのとは別問題)。

タイの場合、そもそもブロマンスじゃなくてBLだから事情が違うけど、製作&マネジメント側が徹底的に(役名だけじゃなくてキャスト本人の名前でも)カップル/コンビとして売り出して稼がせる前提で取り組んでいるように見受けられる。別の作品で別の人と組む場合もあるみたいだけど、何度も同じ人と組んでいる看板キャストもいて、そういうイメージ戦略まで織り込み済みの契約なんだろうなと勝手に想像しています。夢を見せてくれるプロだ。「Lovely Writer」だとそのあたりの契約内容が雑で大問題だったけどね。
で、そうだとしても、契約の上での施策であっても、キャスト本人を性的消費してるなぁと感じる瞬間はあってモヤモヤするんです、が、作品としてエロスも売りのひとつにしている場合はそうなっちゃうのもわからなくもない。難しい。
ちなみに、2getherの主役ふたりは作品外での絡みも控えめで"Bro"呼び。でもじゅうぶん仲良しなのが見てとれてにっこりしちゃうし、ふたり並び立つと美が溢れて眼福です。いや本当に、タイBLドラマは供給の勢いと質の平均値が凄まじすぎる。

 

作品の多様性という点において日本のBL小説&漫画はかなり成熟していると思うのだけど、私は日本のBL映像作品をほとんど摂取していなくて、数少ない観た作品はあまり心に刺さらず…映像作品でこんなにも愛と美が詰まっていて清々しくてハッピーに観られるBLがあるということが衝撃でした。タイのBLドラマ、日本のBL映像作品が好きな人はもちろん、日本のはなんか合わないなという人も楽しめる可能性大です。

私は今後、軸足は中国ドラマに戻しつつも、アマプラで観られるものを中心にタイBL作品もゆっくり観ていくつもりです。あとF4Thailandも! ブライト・ワチラウィット、好きだ〜〜!!! สุดหล่อรักมะ!!!!

 

▽勧めてくれた方に報告したくて描いた。

タイ語にも興味を持ち出した。